
「海外子会社の上司が会社のお金を横領している」――現地従業員から突然このような内部告発が届いたとき、日本本社はどのように動くべきでしょうか。
不自然な経費精算、架空と思われる取引先への送金、会社資産の私的利用、現地業者からのキックバック、在庫の横流しなど、海外子会社における従業員不正・横領にはさまざまな形があります。
特に海外拠点では、日本本社から現場の状況を直接確認しにくく、現地責任者に経理・取引先管理・採用・支払い承認などの権限が集中しているケースがあります。内部告発が届いた時点ですでに長期間の不正が疑われることもあるため、初動が重要です。
しかし、内部告発があったという事実だけで「上司が横領した」と断定することはできません。告発者と上司との人間関係、現地特有の商習慣、経理処理上の問題、単純な管理ミスなど、別の可能性もあります。
企業が最初に行うべきなのは、疑われている従業員を感情的に問い詰めることではなく、内部告発の内容を保全し、会計資料・送金記録・承認履歴・取引先情報・在庫記録など、後から検証できる証拠を失わないようにすることです。
この記事では、ファミリー調査事務所 新宿支店が、海外子会社で横領・従業員不正の内部告発を受けた企業に向けて、最初に確認すべき証拠、やってはいけない初動、海外企業調査で確認するポイント、その後の専門家相談につなげるための情報整理について解説します。
このような状況ではありませんか?
- 海外子会社の従業員から上司の横領を告発する連絡が届いた
- 現地法人から本社への報告と実際の数字が合わない
- 特定の取引先への支払いだけ不自然に増えている
- 経費精算の領収書や請求書に不自然な点がある
- 現地責任者が取引先情報を本社へ開示したがらない
- 在庫数と販売記録が合わず、商品の横流しを疑っている
- 内部告発後に資料やデータが消されないか心配している
- 疑われている上司に知られず事実確認を進めたい
- 海外現地で取引先や営業実態を確認する必要がある
- どの段階で弁護士や会計専門家へ相談すべきか判断できない
海外子会社の内部告発・横領調査の相談内容概要
| 相談内容 | 海外子会社の従業員から「上司が横領している」と内部告発が届いた |
|---|---|
| 主な疑惑 | 横領、架空請求、会社資産の私的利用、キックバック、在庫・商品の横流し |
| 初期資料 | 内部告発メール、送金履歴、請求書、経費資料、承認記録、取引先情報など |
| 調査目的 | 告発内容の客観的な裏付けと、今後の企業判断に必要な事実の整理 |
| 注意点 | 内部告発だけで横領と断定せず、確認できた事実と疑惑を分けて扱う |
| 調査範囲 | 日本国内の情報整理、海外現地の実態確認、公開情報・関係先の確認など案件に応じて設計 |
なぜ海外子会社では従業員不正・横領の発見が遅れやすいのか
海外子会社の管理で問題になりやすいのが、日本本社と現地法人との距離です。
経営数字は毎月報告されていても、その数字の根拠となる現場の取引、在庫、支払い先、従業員の行動まで本社が確認できているとは限りません。現地責任者へ大きな権限を与えている場合、取引先の選定から支払い承認まで一人または少人数で進められていることもあります。
その状態で内部告発が届けば、本社としてはすぐに本人を問い詰めたくなるかもしれません。しかし、証拠が十分に保全される前に調査対象者へ疑惑を伝えると、関係資料が失われたり、説明が事前に準備されたりする可能性があります。
一方で、告発者の主張をそのまま信用することにも注意が必要です。人事上の対立や個人的な感情が背景にある可能性も否定できません。
だからこそ企業調査では、最初に「誰が悪いか」を決めるのではなく、内部告発で示された具体的な事実を一項目ずつ検証できる状態にすることが重要になります。

内部告発を受けた直後に、疑われている上司へ「横領しているだろう」と追及するのは慎重に判断してください。
調査対象者へ疑惑が伝わることで、資料の削除、関係者との口裏合わせ、取引先への連絡などが行われる可能性も考えられます。一方、企業によるデータ確認や従業員調査には現地法、雇用契約、プライバシー、個人情報保護などが関係します。海外案件では対象国の弁護士・会計専門家などと連携し、適法な範囲を確認しながら進めることが重要です。
海外子会社で横領を疑う7つのパターン
内部告発と一緒に確認したい不正の兆候
同じ取引先へ短期間に送金が集中している、契約内容に比べて支払額が大きいなどのケースです。送金した事実だけでなく、契約・納品・サービス提供の実態を照合します。
実際には提供されていないサービスへの支払い、相場とかけ離れた金額、同じ内容の重複請求などが疑われるケースです。
会社のクレジットカード、現金、車両、宿泊費、接待費などが業務とは関係のない目的で使われている可能性があるケースです。
現地責任者が特定業者を継続的に利用し、その見返りとして個人的な利益を受けている疑いがあるケースです。単なる長期取引と不正な利益供与を区別するため、客観的な裏付けが必要です。
帳簿上の在庫と実在庫が一致しない、廃棄扱いの商品が増えた、特定従業員の管理する商品だけ数量が合わないなどのケースです。
従業員やその関係者とつながりが疑われる会社へ不自然な発注が続いているケースです。会社の実態、所在地、代表者、営業状況などを確認する必要が生じることがあります。
突然請求書が差し替えられた、共有フォルダから資料がなくなった、担当者の説明が変わったなどの場合です。ただし、それだけで証拠隠滅と断定せず、変更前後の記録を保存します。
海外子会社の横領疑惑で企業が行う証拠収集・調査の流れ
海外子会社の内部告発では、告発内容が具体的であるほど、最初に確認する資料を絞り込みやすくなります。
「上司が会社のお金を盗んでいる」という抽象的な告発だけでなく、「○月○日に特定業者へ支払った費用に実態がない」「会社の商品を外部へ持ち出している」といった具体的な情報がある場合、その内容を検証できる資料から確認します。
- 1.内部告発の原本と受信状況を保全
メール、社内通報システム、書面など、どの経路で告発されたのかを記録します。内容を編集して転記するだけではなく、可能な範囲で原本性を保ちながら保存します。告発者情報の取り扱いについては社内規程や現地法も踏まえて慎重に対応します。 - 2.告発内容を事実ごとに分解する
「誰が」「いつ」「どの取引で」「いくら」「何をしたとされているのか」を分けます。事実として確認できる事項と、告発者の推測・評価を区別します。 - 3.社内資料と客観的記録を照合する
権限のある担当者が適法な範囲で、請求書、契約書、送金記録、経費精算、承認履歴、在庫記録などを確認します。資料ごとに誰が作成し、誰が承認したのかも整理します。 - 4.取引先・送金先の実態を確認する
問題となっている会社について、所在地、営業実態、公開情報、代表者・関係者など、確認可能な情報を整理します。海外では登記上の所在地と実際の営業拠点が異なるケースもあるため、必要に応じて現地確認を検討します。 - 5.現地で確認すべき事実を絞り込む
事務所が実際に存在するのか、取引先が営業しているのか、申告された業務が行われているのかなど、書類だけでは確認できない事項を整理します。海外現地調査は対象国の法令に従って実施方法を検討します。 - 6.関係者情報と取引の関連性を整理する
疑われている従業員と取引先との関係について、合法的に確認できる公開情報や現地情報などを整理します。関係が疑われるだけで利益供与や横領と断定することは避けます。 - 7.確認結果を報告書として整理する
「確認できた事実」「確認できなかった事項」「追加確認が必要な事項」を分けます。懲戒、損害回復、刑事・民事対応などの法的判断は、対象国・日本双方の弁護士など専門家への相談を検討します。
会社が証拠収集を行う際も、何でも確認してよいわけではありません。
従業員個人の私物端末、個人アカウント、私的通信などへのアクセスは、対象国の法律や会社の規程によって問題となる可能性があります。「会社の不正を調べるため」という理由だけで違法な方法を使用せず、社内権限と現地法を確認したうえで進めてください。
海外企業調査の結果は「横領の断定」ではなく企業判断に使える事実へ整理する
海外子会社の内部告発調査で重要なのは、最初から横領を前提に結論を作らないことです。
たとえば調査によって、告発された取引先が実際には営業実態を持っていた、請求書と納品状況に整合性があったなど、告発内容を裏付けられない場合もあります。
反対に、登記や説明上の所在地に営業実態が確認できない、支払い内容と現地の活動状況が一致しない、複数の取引に同じ不自然な傾向があるなど、追加確認を検討すべき事実が見つかることもあります。
企業調査で得られた情報は、それだけで刑事上・民事上の「横領」を法的に確定するものではありません。確認できた事実を整理したうえで、社内監査、フォレンジック、会計確認、労務対応、弁護士相談など次の段階へつなげます。
海外案件では、対象国によって雇用法、個人情報保護、証拠の取り扱い、解雇手続きなどが異なります。日本本社の判断だけで処分を急がず、必要に応じて現地専門家へ確認することが重要です。
取引先・関係法人の実態確認も必要な企業へ
横領疑惑の中で、特定の取引先、外注先、代理店などの実態に不審点がある場合は、法人向け信用調査で所在地、営業実態、代表者・関係者情報、説明内容との整合性などを確認する方法があります。
海外子会社から横領の内部告発が届いた企業担当者様へ
疑われている従業員へ連絡する前に、 まず内部告発と現在残っている資料を整理してください。 「まだ横領か分からない」「現地へ確認に行けない」という段階でも、 調査目的と確認すべき情報から整理します。

海外子会社の従業員不正・企業調査の料金について
海外企業調査の料金は、対象国、調査内容、現地確認の必要性、調査期間、対象となる会社・人物・取引先の数などによって大きく異なります。
たとえば、公開情報や日本国内にある資料を整理する調査と、海外現地で法人の営業実態や関係先を確認する調査では必要な体制が異なります。
ファミリー調査事務所 新宿支店では、内部告発の内容と企業側が保有している資料を確認し、必要な調査範囲を整理したうえで調査開始前にお見積りをご案内します。最初から大規模な海外調査を前提にせず、何を確認する必要があるのかを明確にしてから調査設計を行います。
| 調査・対応内容 | 料金 |
|---|---|
| 内部告発・従業員不正に関する情報整理 | 案件内容によりお見積り |
| 海外取引先・関係法人の信用確認 | 案件内容によりお見積り |
| 現地法人・営業拠点の実態確認 | 案件内容によりお見積り |
| 従業員不正に関する状況確認 | 案件内容によりお見積り |
| 海外現地での確認調査 | 案件内容によりお見積り |
| 証拠・確認事項の報告書整理 | 案件内容によりお見積り |
国や地域によって調査可能な範囲、必要な日数、現地対応費用などが異なります。調査前に目的・範囲・費用をご確認いただき、ご納得いただいたうえで開始します。
担当調査員からのコメント
海外子会社の横領・従業員不正調査に関するよくある質問
A. まず内部告発の原本と関連資料を保全し、告発内容を具体的な確認事項へ分解してください。疑われている人物への聞き取りを急ぐ前に、証拠が失われないよう社内で対応方針を整理することが重要です。
A. 内部告発は重要な情報ですが、それだけで横領を証明できるとは限りません。送金記録、契約、請求、納品、承認履歴など客観的な資料との照合が必要です。
A. 案件によりますが、送金履歴、請求書、契約書、経費精算、在庫記録、承認記録、取引先情報などが確認材料になります。企業が適法に保有・確認できる資料から整理します。
A. 企業として聞き取りが必要になることはありますが、時期と方法は慎重に検討する必要があります。証拠保全前に疑惑を伝えることで、その後の確認が難しくなる可能性もあるため、弁護士など専門家への相談も検討してください。
A. 対象国や入手可能な情報によりますが、公開情報、所在地、営業実態などを確認できる場合があります。どこまで確認可能かは国・地域・調査目的によって異なります。
A. 関係先の実態や公開情報、現地で確認可能な事実などから整理できる場合があります。ただし、関係があるという事情だけでキックバックを断定することはできません。
A. 国や地域によって法制度、調査環境、情報公開制度、安全状況などが異なります。対象国と確認したい内容を伺ったうえで、対応可能な範囲を検討します。
A. はい。情報が少ない段階でも相談できます。告発内容から、企業側で保全すべき資料や追加で確認する事項を整理し、調査が必要かどうかを検討します。
A. 国内での資料整理だけなのか、海外現地での確認が必要なのかによって異なります。対象国、調査範囲、関係先の数などを確認したうえで期間をご案内します。
A. 対象国、必要な人員、期間、現地確認の有無、調査難易度などによって異なるため、案件内容によりお見積りとなります。調査開始前に費用をご案内します。
A. 告発者情報は慎重に取り扱う必要があります。ただし、企業の内部通報制度、対象国の法令、調査内容によって対応が異なるため、誰まで情報を共有するのかを事前に整理することが重要です。
A. 調査結果だけで処分を決めるのではなく、必要に応じて弁護士、会計士、フォレンジック専門家などへ相談してください。損害回復、懲戒、刑事対応などは対象国の法律も関係するため、専門的な判断が必要です。
海外子会社の横領疑惑は、本人を追及する前の証拠整理が重要です
「内部告発が本当なのか確認したい」 「現地責任者にはまだ知られたくない」 「取引先の実態や不審な送金を確認したい」など、 海外子会社の従業員不正で判断に迷っている段階でもご相談いただけます。 現在確認できている事実と疑惑を分け、企業として次に何を確認すべきか整理します。




新宿支店
海外子会社から従業員不正の内部告発が届いた場合、企業担当者としては一刻も早く本人へ確認したいと考えるかもしれません。しかし、証拠が十分に整理されていない段階で動くと、その後の事実確認が難しくなる可能性があります。
まず重要なのは、内部告発に書かれている内容を具体的な確認項目へ変えることです。「横領している」という結論ではなく、「どの送金が問題なのか」「どの取引先に疑問があるのか」「どの資料と数字が一致しないのか」という形に整理します。
また、海外調査では日本国内と同じ方法がそのまま使えるとは限りません。対象国の法制度や現地事情を踏まえ、確認可能な範囲から進める必要があります。調査を無理に広げるのではなく、経営判断に必要な事実を明確にすることが重要です。