職場の嫌がらせ|証拠
人事に相談したら「証拠はありますか」と言われた。録音も写真もない。言われたことも、されたことも覚えているのに、何も手元にない。そこで止まってしまった方からのご相談が届きます。
先に結論を書きます。多くの場合、証拠がないのではありません。記録になっていないだけです。
この2つは別のものです。証拠がないなら打つ手はありませんが、記録になっていないだけなら、今日から直せます。そして直せる方のほうが、圧倒的に多い。
このページで分かること
- 「証拠がない」の3パターンと、それぞれの打ち手
- 記録に変える5項目と、実際の書き方の見本
- 証拠として強いもの・弱いものの順番
- 録音はどこまでやっていいのか
- 会社が「確認できなかった」と言う仕組み
- パワハラ・モラハラ・いじめで、必要な材料が違うこと
このページは、働いているご本人に向けて書いています。お子さんが学校で受けているいじめについては、「学校のいじめで証拠がないとき|子どもの被害を事実として残す方法と調査事例」をご覧ください。記録のつけ方も、出す相手も変わります。
「証拠がない」には、3つのパターンがあります
ご相談を伺うと、だいたいこの3つのどれかです。どれなのかで、やることが変わります。
3つのパターン
- 第一|あるのに、形になっていない出来事は起きている。覚えてもいる。ただ、書いていない。いちばん多いのがこれで、いちばん直しやすい
- 第二|あったが、消えたメッセージを消してしまった、異動で席が変わった、同席者が辞めた。完全には取り戻せませんが、残っている部分から組み直せます
- 第三|本当に何も残らない形無視、態度、口頭だけの叱責。物として残らない類型です。ここは「出来事そのもの」ではなく「回数と期間」で示します
第三が、いちばん相談の多い型です。そして、だからこそ記録が効きます。一件ずつは形にならなくても、数が並べば形になるからです。
記録に変える、5項目
難しいことはしません。この5つを、その日のうちに書くだけです。
毎回、この5項目
- ① 日付と時刻「10月4日 14:20」まで。これがあるかどうかで、同じ内容でも重みがまったく違います
- ② 場所会議室、自席、廊下、チャット上。場所が分かると、カメラや他の人の存在を後から確認できます
- ③ 誰が・何を言われた言葉は、できるだけそのまま。要約せず、言われた通りに書いてください
- ④ その場に誰がいたかここが抜けやすい。同席者の名前があると、後で聞き取りの対象になります
- ⑤ 業務にどう影響したかいちばん大事な項目です。「嫌だった」ではなく「情報が来ず、納期に間に合わなかった」
書き方の見本
- 弱い書き方
- 「10月上旬、課長にきつく言われた。みんなの前で怒られて、つらかった」——日付がなく、言葉も再現されておらず、業務への影響も書かれていません。これでは判断できません
- 強い書き方
- 「10月4日 14:20、第2会議室。課長から『この程度もできないのか、給料泥棒だ』と、他の5名(A、B、C、D、E)がいる場で言われた。約10分。その後の打ち合わせで発言できず、担当していた見積の提出が1日遅れた」——同じ出来事ですが、扱いが変わります
違いは、才能ではありません。項目を埋めただけです。
書く場所は、会社の端末以外にしてください。社用PCやクラウドに保存すると、退職時にアクセスできなくなったり、会社側に見られたりする可能性があります。手帳、自分のスマホ、自分のメールアドレス宛に送る。この3つが安全です。自分宛てのメールは送信日時が自動で残るので、後から書いたものではないと示しやすくなります。
証拠として強いもの・弱いものの順番
すべてが同じ重さではありません。強い順に並べます。
強さの順番
- いちばん強い|録音・映像その場で何が起きたかが、そのまま残ります
- 強い|文字で残っているやり取りメール、チャット、業務システムの履歴。削除される前に、スクリーンショットを自分の端末に
- 強い|第三者の記録同席者の証言、外部機関がまとめた報告書。当事者以外が記録したものには、別の重みがあります
- 有効|本人がその日につけた記録日時入りのメモ。これも証拠として扱われます。ただし後からまとめて書いたものは弱くなります
- 補強材料|通院の記録被害の大きさを示す材料になります。ただし単独では「原因が職場」とは示せません。記録と並べて初めて意味を持ちます
「録音がないからダメだ」と思われている方が多いのですが、4番目の「本人がその日につけた記録」でも進むことはあります。大事なのは、その日のうちに書いてあることです。
こちらもチェック
学校のいじめで証拠がないとき|子どもの被害を事実として残す方法と調査事例
つきまとい調査の依頼事例|新宿区で実際にあったこと(費用の実額つき)
深夜の帰り道でつけられていた|相手が分からないまま止まったつきまとい調査の依頼事例(東京都新宿区・20代女性)録音は、どこまでやっていいのか
線引き
- 自分が参加している会話の録音|原則として問題ありません叱責された、面談で言われた。相手の同意がなくても、自分がその場にいる会話なら録音できます
- 自分がいない場所に録音機を置く|避けてください自席に置いて離席する、会議室に仕掛ける。これは別の問題になります
- 会社の規則は別に存在する就業規則で録音を禁じている会社があります。法律上問題なくても、社内の処分の対象になりうる点は知っておいてください
- 録音していることを言わない言った瞬間に、相手は言わなくなります。そして「録音されている」と社内に広まると、こちらが孤立します
実務的には、面談や呼び出しの前にスマホの録音を開始しておく、という形がいちばん現実的です。ポケットの中でも、距離が近ければ拾えます。
会社が「確認できなかった」と言う仕組み
相談しても「確認できませんでした」で終わった方へ。何が起きているかを書きます。
- 1.会社は、加害者とされた側に聞き取りをします
これは手続きとして正しいことです。両方から聞かないと判断できません。 - 2.相手は、ほぼ否定します
「指導のつもりだった」「そんなことは言っていない」。ここで食い違いが生まれます。 - 3.同席者に聞いても、はっきりしないことが多い
覚えていない、どちらの味方にもなりたくない。社内の人間に中立を求めるのは、実際には難しい。 - 4.結果、「確認できなかった」になります
会社としては、嘘をついているわけではありません。判断できる材料がなかった、ということです。
これを崩す3つの方法
- 数で出す1件の食い違いは「見解の相違」で終わります。3か月分40件が並ぶと、全部が食い違いだとは言えなくなります
- 業務への影響で書く感情ではなく、業務の問題として出す。「納期が遅れた」「必要な情報が共有されなかった」。会社は業務の話を無視できません
- 外部を入れる社内で確認できないなら、外に出す。労働局の総合労働相談コーナーは無料です。外部に相談した記録が残ること自体が、会社の対応を変えることがあります
パワハラ・モラハラ・いじめで、必要な材料が違います
何を示す必要があるか
- パワハラ①上下関係などの優越的な関係 ②業務上必要な範囲を超えている ③就業環境が害された。この3つが要件です。記録では、とくに②と③を意識して書いてください
- モラハラ(同僚間など)上下関係がないと、パワハラの枠に入らないことがあります。この場合は「継続していること」と「業務に支障が出ていること」で押します。回数がいっそう効きます
- 職場いじめ(人間関係からの切り離し)無視、情報を回さない、集団から外す。一件ずつは小さいので、一覧にしないと形になりません。この型がいちばん記録の有無で結果が変わります
- セクハラ目撃者がいない場面が多い類型です。その日のうちに書いた記録と、誰かに相談したメッセージの履歴が重要になります
同僚からの嫌がらせで悩んでいる方へ。パワハラは「優越的な関係」が要件なので、同僚どうしだとここで争いになります。制度に乗りにくいのに、本人はいちばん参っている。この層が、いまの枠組みから落ちています。だからこそ、回数と期間を示す記録が唯一の武器になります。
こちらもチェック
自転車の人物につきまとわれた|ナンバーが撮れて相手が判明したつきまとい調査の依頼事例(東京都新宿区・30代女性)
つきまといではなかった|2日間の調査で分かったこと(東京都新宿区・20代女性・大学院生)
防犯対策サポート調査|自宅・SNS・ストーカー・嫌がらせの不安を証拠から確認する方法外部に出すときの形
記録が溜まったら、出し方があります。
- 1.一覧表にする
日付・時刻・場所・内容・同席者・業務への影響。1行1件で、時系列に並べます。バラバラの紙で出すと、バラバラに処理されます。 - 2.社内の相談窓口に、書面で出す
口頭ではなく書面。「いつ出したか」が残ります。動かなかった場合、その事実が次の段階で効きます。 - 3.労働局の総合労働相談コーナー(無料)
会社を通さずに相談できます。助言・指導、あっせんにつなげられます。 - 4.足りない部分を、外部の調査で埋める
誰がやっているか分からない、社外での確認が要る、第三者がまとめた書面がほしい。この3つが残ったときが、当社の出番です。
当社ができること・費用
- できることこれまでの出来事の時系列化と書面化、社外での行動確認、公開情報の範囲での確認、労働局や弁護士へ渡せる形へのまとめ
- できないこと社内への立ち入り・潜入。社内への機器設置。相手への警告。探偵は会社の中には入れません
- 費用行動調査3日間 約100,000円〜300,000円/個人信用調査 約30,000円〜200,000円。1日あたり約30,000円〜100,000円です
記録が溜まったあと、どこへ持って行くか
出口によって、必要な材料が違います。どこを目指すかを先に決めると、何を記録すべきかが決まります。
4つの出口と、必要なもの
- 社内の相談窓口・人事必要なのは時系列の一覧と、業務への影響。いちばん早く動ける反面、いちばん「確認できなかった」で終わりやすい出口です。書面で出して、出した日付を残してください
- 労働局の総合労働相談コーナー(無料)会社を通さずに相談できます。助言・指導、あっせんという手続きにつなげられます。必要なのは一覧と、会社に相談したが解決しなかったという経緯。あっせんは強制力がなく、会社が応じなければ不成立で終わります
- 労働審判・訴訟ここからは弁護士の領域です。求められる水準が一段上がります。日時の特定された出来事、相手の言動、業務への具体的な支障、そして損害を示す材料(減給、休職、通院)。思いつきの記録では足りません
- 労災申請精神疾患で休職している場合の出口です。労働基準監督署が、出来事の有無と強度を判断します。通院の記録と、発症前おおむね6か月の出来事の一覧が要ります。ここでも「その日につけた記録」が効きます
どこに出すかで、同じ記録でも書き方が変わります。社内に出すなら「業務が回らない」という書き方。労災なら「いつから、どのくらいの頻度で」という書き方。迷う場合は、5項目をそのまま書いておいてください。素材があれば、後からどの形にも組み直せます。逆に、素材がないものは組み直せません。
こちらもチェック
配信者を狙うネットストーカー|視聴者からの執着と個人情報特定への対策
歌舞伎町の飲食店を出た後から同じ人物がついてくる|客引きか偶然か、つきまといかを確認したい
ストーカー調査の事例|新宿区で実際にあったこと(費用の実額つき)辞める前に、やっておいてほしいこと
限界まで我慢してから辞める方が多いのですが、辞めた瞬間に取れなくなるものがあります。
退職すると、取れなくなるもの
- 社内システムの履歴メール、チャット、勤怠、業務システム。アカウントは退職日に止まります。必要なものは、在職中に自分の端末へ
- 就業規則とハラスメント規程会社がどんなルールを持っていたかは、後から争点になります。在職中に写しを取っておいてください
- 同僚との連絡手段社内チャットしか繋がっていない相手とは、辞めた後に連絡が取れません。話を聞けそうな人とは、私用の連絡先を交換しておく
- 人事への相談記録「相談したが動かなかった」という事実が、後で効きます。口頭ではなく書面かメールで。辞める直前でも、出しておく意味があります
- 離職の理由をどう扱うか自己都合として処理されると、失業給付の開始が遅れます。ハラスメントが理由の退職は、取り扱いが変わる場合があります。退職前にハローワークへ確認を
辞めること自体は、悪い選択ではありません。心身を守ることが最優先です。ただ、辞める日が決まっているなら、その前の1週間で上の5つを済ませておいてください。後から取り返すほうが、何倍も大変になります。
「証拠がない」と言われた段階で、ご相談ください
これまでの出来事を一緒に並べます。それだけで出せる形になることがあります。
調査が必要ないと判断した場合も、そうお伝えします。

匿名でのご相談も可能です/新宿エリア対応
よくあるご質問
A. 会社は「確認できなかった」として終わらせます。加害者に聞き取りをしても、本人が否定すればそこまでだからです。ただし「証拠がない」と「記録がない」は別です。出来事は起きているのに書き残していないだけなら、今日から直せます。日付・時刻・場所・内容・業務への影響。この5項目を3か月続けると、形になります。
A. 録音や映像がなくても進む場合はあります。本人がその日につけた記録も、証拠のひとつとして扱われます。家族や友人に送ったメッセージ、通院の記録も材料になります。ただし「後からまとめて書いたメモ」は弱くなります。その日のうちに書くこと、それ自体に意味があります。
A. モラハラは言葉と態度が中心なので、物として残りません。残せるのは「直後に自分が書いたもの」です。言われた言葉はそのまま、要約せずに。そして同席者の名前を必ず書いてください。後で聞き取りの対象になります。同僚どうしの場合、上下関係がないためパワハラの枠に入りにくく、そのぶん回数と期間が効きます。
A. 自分が参加している会話の録音は、法律上は原則として問題ありません。ただし就業規則で禁じられている場合、社内の処分の対象になりうる点は別です。法律と社内規則は別の話なので、そこは分けて考えてください。自分がいない場所に録音機を置くのは、どちらにしても避けてください。
A. 相手側に残っていること、バックアップに残っていること、他の人に転送していたことがあります。完全に諦める前に、心当たりを一つずつ確認してください。そして「いつ、どんな内容が来て、自分がいつ消したか」を今すぐ書いてください。消した経緯の記録も、材料になります。
A. よくあります。社内の人に中立を求めるのは、実際には難しい。巻き込まれたくないからです。この場合は、人ではなく数で示す方向に切り替えてください。1件ずつ争うのをやめて、3か月分を一覧で出す。そのほうが通ります。
A. 会社の端末やクラウドは避けてください。退職時にアクセスできなくなったり、会社側に見られたりする可能性があります。手帳、自分のスマホ、自分のメールアドレス宛に送るのが安全です。自分宛メールは送信日時が自動で残るので、後から書いたものではないと示しやすくなります。
A. いいえ。探偵は会社の中には入れません。社内に機器を置くこともしません。できるのは、これまでの出来事の時系列化と書面化、社外での行動確認、公開情報の範囲での確認です。「社内を調べます」と言う業者には、どうやってか聞いてください。
A. 社内に残っているものは、ほぼ取れなくなります。メールもチャットも勤怠も、アカウントが止まるためです。取れるのは、自分の手元にあるもの、通院の記録、退職前に連絡先を交換した同僚の証言まで。辞める予定があるなら、辞める前の1週間でできる限り手元に移してください。
A. 社内窓口や労働局より、求められる水準が一段上がります。日時が特定された出来事、相手の言動、業務への具体的な支障、そして損害を示す材料(減給、休職、通院)です。弁護士に相談する前に、時系列の一覧を作っておいてください。それがあるかないかで、初回相談で進む距離が変わります。
A. いいえ。一緒に並べてみて「これなら出せますね」となり、調査をせずにお帰りいただくケースが実際にあります。その場での契約はお願いしていません。
最後に
「証拠がないので動けません」。この一言で止まってしまう方が、本当に多いです。
でも、その言葉の意味は「判断できる材料がない」であって、「あなたの言っていることが嘘だ」ではありません。材料を作れば、動きます。
そして材料は、特別なものではありません。日付、時刻、場所、言われたこと、その場にいた人、仕事にどう響いたか。この6つを、その日のうちに書くだけです。
3か月続けてください。1件では「見解の相違」で終わるものが、40件並ぶと別のものになります。それが、いまの職場で使える唯一にして最強の手です。
今日、何かあったなら、帰ってから3行書いてください。そこから始まります。
新宿支店|ファミリー調査事務所
職場の嫌がらせ・ハラスメントに関するご相談を承っています。まずは状況をお聞かせください。
匿名でのご相談も可能です/新宿エリア対応


相談員より
「証拠がない」とおっしゃる方に、これまでの出来事を順に伺っていくと、ほとんどの方が、かなり細かく覚えています。日付まで出てくることもある。つまり、材料はあるんです。頭の中に。足りないのは、それが外に出せる形になっていないことだけ。一緒に並べるだけで「これなら出せますね」となることが、実際にあります。相談に来ていただいて、調査をせずにお帰りいただくケースです。それでいいと思っています。